今回は、90年代に小学校の国語教科書に載っていた懐かしい文学作品を振り返ってみたいと思います。
別のページでは、小学生の頃(90年代)学校の図書館で読んでいた本も紹介しています。そちらも是非チェックしてみてね!
同じ頃小学生だったあなたには、その作品を読んでいた当時の記憶が蘇ってくるかも!
世代の違うあなたも、興味が湧いた作品があればこの機会に是非読んでみてね。
『きつね』が出てくるお話
キツネの出てくるお話、多かったですね。
「国語の教科書で、狐が出てくるお話」と言われたら、あなたはどの作品を思い出しますか?
手袋を買いに
作:新美 南吉 絵:黒井 健 出版 : 偕成社
キツネの子が手袋を買う為に人間の街へ出て来ます。
街に着いて、店の人にお母さんキツネに変えてもらった人間の手を見せるはずが、間違えてキツネの手を見せてしまうんですよね。
その時のフワッとしてて暖かい感じの挿絵、なんとなく覚えてるなぁ。
寒い雪国の模写と、温かく包み込む母親の愛情が対になって、優しい気持ちになる作品です。
本作は、Webサイトの青空文庫(誰でもアクセスできる自由な電子図書館)で全文を読むことができます。
ごんぎつね
作:新美南吉 絵: 黒井 健 出版 : 偕成社
「いたたまれない話だった」という印象の強い作品です。
それと同時に、「国語の教科書に載っていた話」と言われたら真っ先に思い浮かぶ作品のうちの1つでもあります。
いたずら者の小狐”ごん”は、自分と同じくひとりぼっちになってしまった兵十の家へ、毎日こっそり栗を届けていました。
しかしある日、ごんが悪さをしに来たと勘違いした兵十に、銃で打たれてしまいます。
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」
引用:『ごん狐』 作・新美 南吉
ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
兵十は火縄銃をばたりと、とり落しました。
青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。
終わりが悲しい作品ですよね。
しかし救われるというか、本作への印象が少し変わるような情報を見つけました。
どうやら作者の書いた元々の作品の最後で、ごんは「うなずきました」ではなく、「うれしくなりました」となっていたようです。
兵十に、毎日栗を届けていたのが自分だったとわかってもらえて嬉しくなったごん。
ごんが嬉しかったのであれば、少しは救われる気がしませんか?
まぁこれはこれで、ごんが純粋無垢すぎて泣けてきますかね。
本作は、Webサイトの青空文庫(誰でもアクセスできる自由な電子図書館)で全文を読むことができます。
雪わたり
作:宮沢 賢治 絵:堀内 誠一 出版 : 福音館書店
「キック、キック、トントン」という独特のセリフが心地よく、仲良し兄弟と可愛い狐達の交流が微笑ましい作品です。
そして、自然を美しく表現する文章は宮沢賢治作品の醍醐味ですよね。
本作で、私の好きな文章を引用します。
お月様はまるで真珠のお皿です。
引用:『雪渡り』 作・宮沢 賢治
お星さまは野原の露がキラキラ固まったようです。
本作は、Webサイトの青空文庫(誰でもアクセスできる自由な電子図書館)で全文を読むことができます。
宮沢賢治の作品は、中学校教科書からは『銀河鉄道の夜』や『永訣の朝』などが出てきますが、他にも『注文の多い料理店』や『風の又三郎』あたりも小学校教科書で扱われています。
きつねの窓
作:安房 直子 絵:織茂 恭子(教科書の絵/森山 翠)出版社 : ポプラ社
きつねの染物屋で、ききょうの花を使って青く染めてもらった両手の親指と人差し指で、ひし形の窓を作ると、そこには懐かしい自分の過去の記憶が映し出されるというお話。
過去の嬉しかったり、楽しかった記憶だけ観れるなら、私もきつねの窓が欲しいです。
そして、子どもの頃大好きだった絵本が同じ作者の作品だった事を知りました。他の作品も読んでみたいなぁ。
『うさぎのくれたバレエシューズ 』絵:南塚 直子 出版社 : 小峰書店
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『おに』が出てくるお話
人間から恐れられ、嫌われる存在である『鬼』の視点から書かれたお話。
泣いた赤鬼
作:浜田 廣介 絵:池田 龍雄 出版 : 偕成社
「切ない。」
この作品に対して、まず抱く印象。
人間と友達になりたかった赤鬼のために、悪役を貫き通した青鬼。
そして友人である青鬼が、自分(赤鬼)の為に遠くへ旅立ってしまったと知って涙を流す赤鬼。
どこまでも きみの ともだち
あおおに
引用:『泣いた赤鬼』 作・浜田 廣介
切ないけれど、どこか美しさをも感じるのは、友人の力になれて嬉しかったであろう、青鬼のピュアな友情が感じられるからかもしれない。
おにたのぼうし
作:あまん きみこ 絵:岩崎 ちひろ 出版 : ポプラ社
岩崎ちひろさんの美しくも、どこかおぼろげな絵がこの作品を引き立てています。
気のいい子鬼、おにたの優しい気持ちに胸がほっこりすると同時に、理解されない寂しさに切なくなります。
人間っておかしいな。
引用:『おにたのぼうし』 作・あまん きみこ
おには悪いって、決めているんだから。
おににも、いろいろあるのにな。
『戦争』のお話
国語の時間に扱う戦争のお話はいくつかありましたよね。
本当にあの世代の人たちは、厳しい時代を生き抜いてきたんだよなと感慨深く思います。
私の教科書にはなかったのですが、『ちいちゃんの影おくり』が載っていたという方も多いみたいですね。
作:あまん きみこ 絵:上野 紀子 出版 : あかね書房
おかあさんの紙びな
作:長崎 源之助 絵:山中 冬児 出版:岩崎書店
戦争直後の国中で食べ物に苦労していた時代、母の心の強さと、そうでなければ生きていかれなかった状況が読み取れて、改めて戦争の虚しさを感じさせてくれる作品です。
同時に、母が子どもを、子どもが母を、両者で気遣いあう温かい感情が、お雛様の季節3月の春のイメージや、桜の花びらの様な淡いピンク色を連想させます。
一つの花
作:今西 祐行 絵:伊勢 英子(教科書の絵/松永 禎郎) 出版:ポプラ社
「一つだけちょうだい。」という台詞が印象的でした。
戦争に駆り出された父は、汽車を待つ駅で、グズリだしてしまった幼い娘に、大事にする様にと伝えて一輪のコスモスの花を渡しました。
一つだけしかない大切な命を奪ったり、奪われたりしてしまう戦争に向かわなければならない父と愛娘との別れの場面に胸が締め付けられます。
『その他』のお話
『スーホの白い馬』は私の教科書には載っていなかったのですが、多くの方が教科書に載っていた作品として名前をあげていました。
『スーホの白い馬』モンゴル民話 作:大塚 勇三 絵:赤羽 末吉 出版 : 福音館書店
それから、芥川龍之介の『羅生門』は確か中学で、『蜘蛛の糸』や『杜子春』は小学校教科書で読んだ様な気がします。
『芥川龍之介短編集 くもの糸・杜子春』作:芥川 龍之介 絵:百瀬 義行 出版 : 講談社
モチモチの木
作:斎藤 隆介 絵(切り絵):滝平 二郎 出版 : 岩崎書店
切り絵が強く印象に残っている作品です。
昔の着物や、所々で出てくる方言も味があって好きです。
おじいさんと2人で暮らしている5歳の豆太は、お化けに見えてしまうトチの木が怖くて、夜にひとりでトイレに行くことが出来ません。
そんな豆太におじいさんは、その木は特別な夜にはとても綺麗な火が灯り、それは「勇気のある子どもだけが見ることが出来る山の神様のお祭り」なのだという話をしました。
豆太とおじいさんの、お互いを思いやる気持ちに心が暖かくなる作品です。
木竜うるし
作:木下 順二(原作は宮崎、その他地方の昔話らしい) 出版 : 光村図書出版
漆という物を初めて知った作品でした。
きこりの兄弟の兄は、ある日水の溜まった淵の底にたくさんの漆が溜まっているのを発見します。
漆は高価ですから、真面目に働かなくても楽な暮らしができると、怠惰になった兄の様子から、漆の淵の存在に気付いた弟も兄には内緒でうるしを取り始めました。
そのことに気付き、漆を独り占めしたかった兄は、淵の底に木彫りの竜を沈めます。
弟はそれを本物の竜だと勘違いして逃げ出しました。
しかしその後、兄が同じ様に漆を取ろうと淵に潜るとその木竜は兄にも襲いかかってきたのでした。
結局、兄と弟どちらもその淵へは二度と戻ることはできなかったというお話です。
アレクサンダとぜんまいねずみ
作・絵:レオ=レオニ 訳:谷川 俊太郎 出版 : 好学社
作者の名前と、可愛らしいねずみの絵が印象に残っています。
ねずみのアレクサンダは、友達になったおもちゃのぜんまいねずみウィリーが大好きでした。
しかし棲み家に戻って一人になると、自分もウィリーみたいなぜんまいねずみになって、子ども達からちやほや可愛がられたいと羨ましく思う様になりました。
そんなある日、アレクサンダはウィリーから、生き物を他の生き物に変えることのできる、不思議な力を持ったトカゲの話を教えてもらうのでした。
同じ作者の作品で、『スイミー』も教科書に載っている作品として有名ですね。
『スイミー』出版 : 好学社
おじさんのかさ
作・絵:佐野 洋子 出版 : 講談社
有名な絵本、『100万回生きたねこ』の作者の作品です。
『100万回生きたねこ』出版 : 講談社
おじさんは、いつも持ち歩いているお気に入りの傘を使うのがもったいなくて、雨の日は出かけなかったり、雨宿りしたり、傘が濡れない様に大事に胸に抱えて走って家に帰っていました。
大事にしすぎて使えない物ってありますよね。
私も、小学生の頃プレゼントでもらった香り付きの可愛い消しゴムは、フィルムも剥がさずに勉強机の一番上の引き出しの中にずっと保管していました。
お手がみ
作:アーノルド=ローベル 訳:三木 卓 出版 : 文化出版局
友達を思いやる気持ちにほっこりする作品です。
授業では、当時私もがまくんに手紙を書いた事を思い出しました。
一度も手紙をもらったことが無くて落ち込んでいるがまくんに、仲良しのかえるくんは素敵な手紙を書いて送りました。
『詩』の作品
短いから読みやすいのに、その言葉には豊かな感情が籠っていて心に強く響く不思議な詩の世界。
所々を今でも覚えていて、暗唱できる詩があなたにもありますか?
雨ニモマケズ
作:宮沢 賢治
子どもの頃は、この詩の様な人間になりたいと憧れたものです。
そして資本主義社会で生活する大人になった今では、この理想像から遠い選択をする機会が多くある様に思います。
それでも時々見返せる様に、心の片隅に、忘れずそっと大切にしまっておきたい。
本作『雨ニモマケズ』は、私にとってそんな作品です。
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラツテヰル(中略)
ミンナニデクノボートヨバレ
引用:『雨ニモマケズ』作・宮沢 賢治
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
本作は、Webサイトの青空文庫(誰でもアクセスできる自由な電子図書館)で全文を読むことができます。
夕日がせなかをおしてくる
作:阪田 寛夫 出版社 : 岩崎書店
小学生の頃、詩を暗記してクラスメイトの前で暗唱するという事をした時に暗記した記憶があります。
夕日がせなかをおしてくる
引用:『夕日がせなかをおしてくる』作・阪田 寛夫
まっかなうででおしてくる
から始まる、子どもの元気がまるまる詰まった様な内容で、リズミカルさが楽しい詩です。
私と小鳥と鈴と
作:金子 みすず 絵:高畠 純 出版社 : JULA出版局
皆それぞれに出来ることと出来ない事があって、皆それぞれが素晴らしいのだという内容の詩。
テンポ良く、親しみやすい文体で、詩のメッセージがスッと心に響きます。
かっぱ
作:谷川 俊太郎 絵:瀬川 康男 出版 : 福音館書店
小学生頃の子ども達って言葉遊びが好きですよね。
定番の「布団が吹っ飛んだ」等のダジャレや、「パンはパンでも食べられないパンは?」等のなぞなぞ、「膝って10回言って」なんていう遊びも大流行でした。
かっぱかっぱらった
引用:『かっぱ』作・谷川 俊太郎
かっぱらっぱかっぱらった
まとめ
いかがでしたか?
知っている作品はありましたか?
なお、光村図書出版が昭和46年度から平成12年度までの、人気の高かった国語教科書の作品をまとめた児童書も販売されています。
興味のある方は、是非覗いてみてください。
『光村ライブラリー全18巻セット』出版 : 光村図書出版
本記事が、あなたが子どもの頃のドキドキワクワクしていた感覚を思い出すきっかけになれれば幸いです。
ではまたね!
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